「残業代ゼロは少子化対策?」安倍首相は馬鹿なのか?それとも・・・

 2007年1月6日付朝日新聞3面に一定条件化で会社員の残業代をゼロにする「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入について、安倍首相が「日本人は少し働きすぎじゃないかという感じを持っている方も多いのではないか」と述べて、労働時間短縮につながるとの見方を示したそうである。要するに、長く働くほど残業手当がもらえる仕組みを変えれば、働く時間を弾力的に決められ、結果として家で過ごす時間も増えて、出生率増加にも役立つと考えているらしい。

 安倍首相が本気でそのように考えているなら大馬鹿者である。そのようなことは無いだろうから、そうすると安倍首相は本質のすり替えの天才である。大体、日本の政治家だけの問題かどうか分からないが、少なくとも日本の政治家は、国会答弁等を聞いても真正面から答弁せずに、問題をすり替えたり、ごまかしたりする。これが、国民の政治離れを誘発した一因であると思うのだが。

 ホワイトカラーエグゼンプションは2005年6月に日本経済団体連合会が提言を行い、また、アメリカ政府が世界的に進めるグローバル資本主義導入の一環として外資企業(アメリカ企業)の収益性・効率性を上げるために、日本国政府に導入を要請したものである。要するにこの制度は、産業界が残業代や休日出勤の割増賃金を払う必要をなくし、人件費削減を行い、対象従業員の健康管理義務も無くすという、産業界にとって非常に美味しい制度なのである。

 また、厚生労働省の少子化問題を担当している部署内においても、欧米と違って仕事の守備範囲が明確でない日本では、仕事が終わっても直ぐに家に帰れるわけでもなく、本制度導入による長時間労働促進の為に、家庭で過ごせる時間がますます減ってしまう、という反対意見も出ている(2006年12月28日 読売新聞)。このような意見がある中で、どこから安倍首相の発言が出てくるのか。安倍首相の頭は産業界とアメリカだけの言い分を聞くように出来ているのではないのか。実際に過労死弁護団全国連絡会議によると、ホワイトカラーエグゼンプションを導入しているアメリカでは、同制度の適用を受ける労働者の方が労働時間が長くなる傾向にあると報告している。

 そもそも現在も公然と行われているサービス残業等を放置したままで、更に労働者を無制限にこき使う制度を産業界とアメリカから言われるままに導入しようとする厚生労働省と安倍首相等の親米主義者。これが売国奴でなくて何なのか。あれだけリストラをやってきた企業が、働く時間を弾力的に決められて、労働時間も短くなるような労働者が得するような制度の導入を提言する訳が無いではないか。そんなことは自明の理ではないか。

 更に気に入らないのは、安倍首相の言い分を言い返すと、日本の労働者は残業手当欲しさに必要も無いのに残業している、と言っているのと同じである。国民も馬鹿にされたものである。

 この法案をどうするか、選挙への影響等を政府は考えているようである。労働者を敵に回しても産業界を見方につけて政治献金を沢山もらって選挙を乗り切るか。

 国民もレベルが低いと思う。島根の地元の昔話で選挙の時に俵さんに投票してくれと言われて、字の書けないその人は投票用紙に俵の絵を描いたと言う話がある。この話は、地元の有力者に投票を依頼されたら、素直にその人に投票する選挙民の体質を表している。現在でも基本的にその体質は変わっていないだろう。町の有力者や会社から投票依頼されたら、素直に従う選挙民。自分で考えることの出来ない選挙民。それは投票直前まで誰に投票していいか分からずにいる選挙民の数の多さが物語っている。この国は滅びるような気がする

(2007年1月7日 記)

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